【溜め込み禁止】 内部留保と賃上げ
内部留保が積み上がると言うニュースが出ると、必ずと言っていいほど 『 賃上げ論 』 が出てくる。
つまり、企業はお金を溜め込んでいるのに、それを賃金に回さないから景気も回復しないし、労働者も貧しいままと言う話だ。
でも、前のページ(【イラストで解説】 サルでもわかる内部留保)でも書いたように、内部留保がそのまま現金化しているわけではないので、『 内部留保の積み上がり = 即賃上げ 』 にしてしまうと、問題が起きることがある。
確かに、純利益が出たら賃金として社員やアルバイトなどに割り振って、純粋な利益をゼロかマイナス(赤字)にしてしまえば、内部留保は積み上がらなくなる。
でも、大規模な投資をするために必要な『 まとまったお金 』が無くなってしまったり、経済危機が起きたりした時に必要な手元のお金が無くて、会社が傾きやすくなってしまう。
例
ポコポンポンポコと言う商品が爆売れする
↓
多額の純利益(内部留保)が出る
↓
内部留保をゼロにすべく、ボーナスや特別手当などで全部吐き出す
↓
コストや税金を引いたら『 純利益がゼロ 』になる
(純利益ゼロ = 内部留保なし)
↓
新商品の開発や工場新設などに充てるお金がなくなる
↓
ポコポンポンポコと言う商品が飽きられて売れなくなる
↓
社員に払うお金、工場などの設備維持費に充てるお金がない
↓
赤字が出てしまう
↓
赤字が続くと会社の預貯金が無くなる
↓
借金して会社経営する
↓
慌ててリストラや工場売却するも借金返済には届かず
↓
借金の利子が払えず倒産 \(^o^)/
年々ジワーと溜まっていく会社の預金
ならば、内部留保で現金が溜まっていっていないのかと言うと、そう言うわけでもない。
企業業績が好調で、特に投資も賃上げもしていない場合は、預金が溜まっていく。
日銀のHPのデータを見ると、その件についての表が見れる。
参考図表
掲載日 公表対象期 データ
2016年 6月17日 2016年第1四半期 [PDF 504KB]
非金融法人預金(銀行とか以外の会社の預金)がジワーと積み上がっていっているのがわかる。
マイナス金利と大規模金融緩和で、長期金利も貸出金利も史上初の低さになっているのに、現預金が積み上がっていっている。
金融資産の中で、株式はリーマンショックで株価が大暴落した時には目減りしているが、これは株式市場の影響を大きく受ける類のもので、あまり気にすることはないように思う。
ちなみに、非金融法人預金(銀行とか以外の会社)の借り入れの方を見てみると、少しの変動はあっても、これがまたびっくりするほど全然伸びていない。
ずっと横ばいだ。
マイナス金利と大規模金融緩和で、長期金利も貸出金利も史上初の低さになっているのに、会社は借り入れを増やしていない。
今の日本会社では、お金を借りる必要はないようだ。
溜まっていく会社の預金が賃上げに結びつかない件
内部留保が溜まっていると言う話が出る時に、たいてい問題にあげられるのが『 賃金 』 のことだ。
『 賃金は上がらないのに、企業は内部留保を溜め込んでいる 』
内部留保の話はおいておくとして、企業の現預金は積み上がっていっているのに、アベノミクス初動の時にあったような賃上げの力は落ちてきている。
これでは、内部留保がやり玉に上がってしまうのも少し仕方ないような気がする。
でも、賃金を上げるには、それなりの環境が必要だ。
いくら会社にお金があっても、賃上げに使わなくて済む環境であれば、経営者は賃上げにお金は使わない。
経営者はボランティアではないからだ。
じゃあ、どんな時に賃金が上がるのだろうか。
一番近い賃上げ力があった時は、アベノミクス初動のときだった。
人手不足が深刻化して、賃上げに結びついた。
例
A君
「こんな賃金では働けない。(´・ω・`)」
「もっと賃金のよいところで働くぞ」
↓
B運送
「困ったなあ。( ´Д`)=3」
「人がぜんぜん集まらないよー」
「じゃあ、賃金UPしてみるか」
↓
賃金UPして求人広告を出す
↓
A君
「お?(´・∀・`)」
「これはなかなかの賃金」
「ここに就職しよう」
↓
純利益(内部留保)の額は減るものの、企業は賃金にお金を回す
移民や外国人労働者を入れて『 人手不足を解消 』してしまうと、こう言う類の賃上げが起きにくくなる。
人件費の安い労働者を使い続けることができるので、会社や企業経営者にとっては移民や外国人労働者を入れた方が有利だが、これでは賃金が上がっていかない。
もちろん、社員のモチベーションをアップさせるために、会社が儲かれば、業績の良い一部の社員の賃上げを行うことはあるかもしれないが、平社員やアルバイトやパートや期間従業員など、人手不足の状態でないと、賃上げに結びつけることは難しい。
かつて好業績であったイオンも、好業績で潤沢だった利益余剰金を、社内で大量に働いているパートやアルバイト従業員に振り分けることはしなかった。
最低賃金付近の賃金で延々と雇い続けた。
会社とはそう言うものだったりする。
なので、個人的には『 人手不足で国内の日本企業がヒーヒー言っている → 政府がその声をきいて移民や外国人労働者をそのまま受け入れる 』と言うのは、内部留保を吐き出せと言うよりも問題なのではないかと思う。
この他、生活費にかかる費用が上昇してしまって、人が集まらないことでも賃上げが起きる。
例えばこんな感じだ。
例
A君
「年々、生活費が上がっていくなあ。(´・ω・`)」
「それなのに、賃金が低くて働いても生活できない・・・」
↓
B運送
「困ったなあ」
「人がぜんぜん集まらないよー ( ´Д`)=3」
「じゃあ、賃金UPしてみるか」
↓
賃金UPして求人広告を出す
↓
A君
「これならギリギリ生活できる (´・_・`)」
「よし、ここに転職しよう」
↓
純利益(内部留保)の額は減るものの、企業は賃金にお金を回す
この場合、賃金アップしたところで生活がギリギリには違いないので、将来に全く夢が持てない、生きているだけで精一杯で毎日が辛くてたまらないなど、社会不安が起きやすい。
しかも、賃金の上昇を防ぐため、安くで働く外国人労働者や移民を日本に入れてしまうと、国内の既存労働者の賃上げが起きないので、いよいよ彼らが行き詰まってしまう。
また、外国人労働者が国内に定住して働くと、彼らも同様の問題(賃金が低すぎて生活費が足りない)を抱え込んでしまうため、問題はさらに悪化する。
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