インフレターゲットしたらどうなる?

インフレターゲット

インフレターゲットというのは、日銀が民間資産の買い取りによって、お金の供給量を調節したり、国が公共投資額などを調節して、目標値(ターゲット)までインフレ率を上げる・・・或いはインフレ率を目標値まで下げる・・・という方法です。

そもそもは、後者の方の目標値までインフレ率を下げるためのインフレターゲット・・・というのが主流で使われていた言葉ですが、長々とデフレが続いている昨今、日本では、インフレ率を上げるためのインフレターゲット論も幅をきかせているというわけです。


日銀が民間資産の買い取りによって、お金の供給量を増やした場合

− 金融政策にてデフレを脱却する方法(マネタリズム) ―
日銀が、銀行などの持っている「焦げ付きそうな資産の買い取り」を通じてお金の供給量を増やし、インフレターゲットを行う・・・という方法です。これを行うと、銀行にはお金が流通しますが、 お金をたくさん刷って銀行にお金を供給しても、消費者物価が上昇するとは限りません。

デフレ不況の下では、新規の優良な貸し出し先を見つけるのに困っている銀行は、お金がたくさん手に入ったところで、積極的な貸し出しを行わないからです。

つまり、一握りの優良企業は、株式や社債を発行したりして自ら資金調達することができますし、さらなる株式や社債の発行が出来ない一部の・・・な企業が、銀行にお金を借りるだけに留まってしまうからです。その為、デフレを抜け出す効果は、限定的だと思われます。
(「不良債権処理」という点では、評価できるかもしれませんが・・・)


金融政策でデフレを脱却する方法

日本銀行が民間銀行にお金を供給する
 ↓
民間銀行がそのお金を企業・個人に貸し出す
 ↓
企業・個人が、収益拡大・消費の為に使用する
 ↓
企業・個人の、投資・雇用などの増加につながる
 ↓
収益が拡大し、再投資が行われる
 ↓
・・・この後も同様に波及して行 く


赤字なのに、さらに国債を発行して財政支出を増やした場合

− 財政政策(信用創造(貸し出し))を通したマネーサプライ増加によってデフレを脱却する方法 −
1990年代においては国が借金をして公共投資などをして、需要を増加させれば景気が良くなるというケインズ政策を採り続けました。確か小渕内閣の頃でした。

公共事業などをバンバンやって、国の景気を盛り上げて、デフレをストップさせようとしたのです。
しかしながら、その結果はというと、国の借金がふくれ上がるだけで、 建設関連などへの需要の増加しかできませんでした。
このことで、公共投資が日本のGDPを下支えをしたことは確かですが、※ ケインズの主張した財政政策論は、現実には使えないものだと証明されてしまったのでした。

赤字財政支出による需要の増加は、 将来、国民への増税、歳出削減の削減などの形で、フロー所得を減少させて、GDPを縮小することにつながる効果しかありません。


公共投資でデフレを脱却する方法

政府が赤字国債を発行して公共投資をする
 ↓
公共投資の仕事を受注した企業・個人の雇用が増加する
 ↓
企業・個人が収益拡大や消費の為にお金を使用する
 ↓
企業・個人の投資や雇用などがさらに増加する
 ↓
収益拡大・再投資に結びつく
 ↓
・・・この後も同様に波及して行く


このように所得の増加→需要の増加が無限に繰り返されることにより、最初に行わ れた公共投資の金額の何倍も需要を作り出す効果がある・・・
・・・と、ケインズ氏(1883年〜1946年)が考えた理論です。

公共投資を行った場合、まずその金額だけ総需要が増加する。
次にその投資により 恩恵をこうむった人や企業の所得が増加する。
それにより所得の増加額に消費性向を 掛けた分だけ需要(消費支出)が増加する。

次にその増加した消費により恩恵をうけ た人や企業がまたその消費性向分だけ需要を増加させる。
次もまた同様に波及して行く。
このように所得の増加→需要の増加が無限に繰り返されることにより最初に行わ れた公共投資の金額の何倍もの需要創出効果がある
とケインズは考えた。


↑の文章は、THINK NET 様のhttps://www5a.biglobe.ne.jp/~nozo-mu/koukyou.htm のページより引用いたしました。


まとめ

以上のようなことから、景気を回復させ、デフレから脱却するためには、銀行の抱えている不良債権の解消や、規制緩和や、新規産業の立ち上げを支援するなどの「経済の構造の見直し」など、別の視点での対策が必要となるかと思われます。

それはそうと、円高ショックで国内産業が大打撃を受けたのを保護するために、平成バブル前に行った金融緩和は平成のバブルを生んでしまいました。

しかしながら、平成バブルでも、お金の流通量の増加が、 物資やサービスの需要の増加にはつながりませんでした。(消費者物価の上昇は2〜3%に過ぎませんでした)そのお金は、不動産や株式投資などに使われて、資産インフレが起こってしまっただけだったのです。

以上のようなことからも、金融緩和を行ったところで、消費物価を上昇させることは難しく、資産インフレを起こすことぐらいしか効果がない証拠であると思われます。


shoさんから頂いた文章紹介

shoさんから、頂いた以下の文章を元に、こちらのページを作成しました。


○中央銀行による民間資産の買い取りを通じた通貨供給量増加
資産の買い取りは、企業や個人に日銀券が流通するだけのことです。それがフロー(所得)の増加にはほとんどつながらず、借金返済や投機、預貯金などにまわるはずです。


○信用創造(貸し出し)により通貨流通量(マネーサプライ)増加
企業や個人の手に渡るためには、民間銀行による信用創造(貸し出し増加)が必要です。
日本銀行(通貨供給)---民間銀行(貸し出し)----企業、個人

平成バブルのときは、日銀→民間銀行→企業、個人への貸し出しを通して、お金が世の中に渡りました。貸し出しされたお金が、企業の収益拡大のために使われ、それが個人所得増加を通して庶民の手に渡り、生産物への需要が増加するということなら納得できます。

しかし平成バブルではマネーサプライの増加が、物資やサービスの需要増加にはつながりませんでした。(消費者物価上昇は2−3%)
そのお金は不動産、株式などに投じられて、資産インフレが起こってしまいました。

お金をたくさん刷って世の中に流通させても消費者物価が上昇するとは限りません。
現在のデフレ不況下では、不良債権処理に苦悩する銀行は積極的な貸し出しを行いません。
1部の優良企業は自ら資金調達することができますし、新たな不良債権の火種となるような不良企業が貸し出しを希望する程度です。


○赤字財政支出
1990年代においては財政支出で需要を増加させれば景気が良くなるという、間違えたケインズ政策を採り続けました。その結果、公的債務が積み上がるのみで、建設関連などへの需要増加しか達成できませんでした。確かに公共投資が、GDPを下支えをしたことは事実です。

しかし乗数理論は現実には使えないものだと証明されてしまいました。
赤字財政支出による需要の増加は、将来において国民への増税、歳出削減などの形で、
フロー所得を減少させて、GDPを縮小することにつながるだけです。
結果としてインフレターゲット政策でデフレ脱却は無理だということになります。

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