デフレについて

デフレ万歳?物が安くなるので万々歳?
そう考えておられる方、ちょっと↓の例をご覧下さい。
このページをご覧になった後は、デフレ万々歳なんて言えなくなるかもしれません。

世にも恐ろしいデフレの国の物語

ある国で、150円で販売されているボールペンと、それを作っていた業者さんがいました。その150円のボールペンは、それまでその国では安い値段でしたので、よく売れていました。

しかし、ある業者さんが、「そうだ、人件費がこの国よりもうんと安い国で、もっと安い製品を作って、その商品をこの国に輸入して売ってやろう。そうすれば、80円でボールペンを販売できるぞ。このくらい安い商品なら今まで販売してきたボールペンよりもずっと安いので飛ぶように売れる・・・」

そう考えて、その業者さんは、この国よりもうんと安くでボールペンを製造できる国に行って、格安でボールペンを作り、今までは150円で作っていたボールペンを、なんと80円で販売し始めました。

すると、今まで150円でボールペンを作っていた業者さんは、全然売れなくなってしまい、ある人は廃業し、ある人は80円にまで価格を下げて売ることになってしまいました。

価格を下げた業者さんは、価格を下げてしまったため、ボールペンを売ってもほとんど利益が出なくなりました。そのため、その業者さんはこの危機を打開するため、まず人件費を減らすことにしました。今まで雇っていた人の3分の2ほどの人にやめてもらい、その代わり、安いバイトの人を雇うことにしました。

その業者さんから解雇された人は、職探しを始めました。
しかし、他の職業を見つけようにも、どこの会社も前にいた業者さんと同じような状態で、バイトしか雇っていません。「今度就職しても給料が下がっちゃうなぁ・・・どうしよう・・・」

その人は給料が下がってしまったので、ちょっと高めの国産品を買うことが出来ません。そこで、価格の安い輸入品を買うことにしました。

そのような人が増えたためか、いよいよその国の商品を買ってくれる人は居なくなってしまいました。そして、その国で物を作っている業者の社長さんたちは、どんどんと安くで物を作れる外国へと旅立っていきました。

その為、その国の就職はさらにどんどんと難しくなっていきました。
しかしながら、何とか正社員として就職することに成功していた人も、ある事に気がついてしまいました。

「そういえば、私、年金もらえるのかなぁ・・・?何だか少子高齢化のようだし、年金の額、減らされるかもしれないし、今のうちから貯金しとかなきゃダメかなぁ・・・」
そう思い、その人は今までの浪費癖を改め、セッセと貯金をし始めたのでした。
将来に一抹の不安があったので、今のうちから「アリさん作戦」を実行です。

このような人が増えてきたため、唯でさえ国産品を買ってもらえなくなっているのに、さらに商品を買ってくれる人が減ってしまったのでした。

こんな状態が長く続きましたので、その国の政府は、金利を引き下げました。どんどんと切り下げていき、もう下げれないヨ〜という「ゼロ金利」にまで金利を下げていきました。
どんどん金利を下げてくれたので、住宅ローンの金利も安くなりました。これはお買い得かも・・・♪とばかりに、家族の賛成もあってローンを組んでお家を買ったお父さんがいました。

しかしデフレはそんなお父さんを苦境に導いてしまいました。
そのお父さんはパソコンを作っていたのですが、雇われていたその会社が価格競争に打ち勝つために、人件費を減らす作戦を実行したのです。その為、お父さんの給料も減ってしました。

物の値段が下がるのと、お父さんの給料が下がるのこととの競争です。物の値段はジワリジワリとお給料と一緒に下がっていきますが、借金の額は金利が下がったとはいえ、減るわけではありません。その為、お父さんの借金の実質的な重みはどんどんと重くなってきました。

以前はお父さんは、手取りで40万受け取っていましたが、会社の人件費の削減で、お父さんの給料は30万円になってしまいました。

お父さんの受け取っていた給料の40万円のうち、住宅ローンの支払いの額は10万円だったので、お父さんは住宅ローンを組むことにしたのですが、お父さんの給料が30万円になってしまうと、生活はものすごく苦しくなってしまうので、それまで休暇などに旅行やレジャーなどに出かけていたのを止めて、子供たちのゲームなどを買うのもクリスマスだけ、ということにしたのでした。

その為、飲食店や旅館やホテルなどの経営は、とても苦しくなり、飲食店や旅館やホテルは相次いで閉鎖されました。
しかも、飲食店や旅館などの経営を維持するためにした借金を銀行に返すために、担保として登録してあった土地が下がってしまい、二束三文になってしまっていて、倒産してしまって、担保に取られた土地で返済しても、借りた額のお金には全然届きません。

お金を貸していた銀行は、大変なことになってしまいました。担保を取って貸したはずのお金が、倒産しても全然返ってきません。

銀行は苦境に立たされてしまいました。銀行はたくさんの会社や経営者の人々にお金を貸していましたが、デフレ不況で色々な会社が倒産してしまう上に、お金までが返ってこないのです。
本当に大変な事になってしまいました。
銀行はお金が返ってこないために、たくさんの負債を背負い込んでしまったのです。

銀行は考えました。
「何だか最近は景気が良くなくて、お金を貸しても全然帰ってこないし・・・土地とか担保に取ったとしても、こうも値段がずるずる下がるんじゃ、担保の意味もないし・・・しかも妙に倒産してしまう会社も多いでしょ?もう、お金貸すの嫌だなぁ・・・」
そこで、銀行は国債などのリスクの少ない物で運用をするようになり、その国の会社にお金を貸さなくなってしまいました。

それで困ったのは、自転車操業で何とか食いつないでいた会社やこれから起業しようとする人々でした。銀行がお金を貸してくれなくなったのです。途端に資金が滞り、たちまちのうちに倒産件数が増えました。

しかしながら、そんな修羅場の中でも、とても元気な会社もありました。
それはディスカウント店などの超安売り店です。
そういうお店には、人がたくさんやってきました。
安いので、そういうお店で物を買えば、お金を使う額が減るので、みんなウハウハいいながらその安いお店で買い物をしました。

そのディスカウント店は、別にズルをして安く売っているわけではありません。
正規の取り引きをして安くで仕入れているのです。
メーカーや卸の人に、商品を大量に仕入れるから、一個あたりの単価を安くしてヨと交渉するのです。

その交渉の甲斐あって、ディスカウント店には激安な商品が、所狭しと並びます。
人々はそういう店に大挙して押し寄せました。
しかし、その反面、商店街など、安くで販売できないお店はどんどんと潰れていきました。

この世の中で安売りなどで成功してお金持ちになった人々と、職を失い貧乏になってしまった人や、会社が潰れて借金を抱えてしまった人や、賃金がカットされ、ローンの重さに耐え切れなくなりつつある人・・・。その後も貧富の格差はどんどんと広がって行きました。

物を買える人もどんどんと減っていきました。
生き残った会社は、リストラや賃金カットなどで業績が回復しましたが、肝心のものを買ってくれる人自体はあまり増えていません。
銀行はお金を貸す量を減らしながらも、倒産する企業が一通り倒産しましたので、まだ傷口はまだふさがってはいませんが、国債の運用など細々と経営を立て直し、少しづつ傷口を治していきました。

ボールペンを作る企業から少しづつ視野を広げて例を語ってみましたが、皆さんはいかが思われたでしょうか?↑を読み終えた後も、デフレ万歳と思われた方、いらっしゃいますか・・・?


デフレの起こる原因

T 総需要の縮小(物があふれた場合)
物を買う側の人々が、さほど物を必要としなくなることです。
冷蔵庫がほぼ全ての家庭に行き渡り、買い換えなければならないほどの画期的な商品が出なかったとしたら、皆さん、大きな出費をして冷蔵庫を買い換えようとは思わないかと思います。そのような場合、たくさん作っている冷蔵庫を、他社よりもたくさん買って貰おうとすると、値段を下げて売らねばなりません。これが、物があふれた場合の総需要の減少という状態です。

U 総需要の縮小(賃金が低下したり、雇用がなくなった場合)
金利の上昇によって投資をしにくくなって経済が冷え込んだり、その国の経済の競争力が低下したりした場合、企業のほうでは賃金カットやリストラなどをして、何とか生き延びようとします。そのため、賃金カットやリストラなどされた人々が物を買うことが出来なくなり、さらに物を作っている企業の業績が悪くなってしまいます。これが、賃金が低下したり雇用がなくなった場合の総需要の減少という状態です。

V 総供給の増大
物があふれかえって、安くたたき売りしなければ物が売れなくなってしまう場合に起こります。工業で物がたくさん生産できるようになったり、農産物がたくさん取れるようになったら値段が下がります。例えばトウモロコシなどが世界中でたくさん採れたとしたら、出荷調整でもしない限り、トウモロコシの値段は下がってしまいます。

V 金融の過剰な引き締め
金融を過剰にひきしめるとデフレが起こってしまいます。
金融を引き締めるというのは、金利を上げたり、通貨の供給量を減らしたりする・・・ということです。
金利がべらぼうに引き上げられてしまうと、借金をして投資をして一旗上げたやろうと目論んでいる人々は投資をしなくなり、景気が冷え込んで、デフレに突入してしまいますし、自転車操業でやっとかっと経営をしている人々は、金利負担に耐え切れなくなり、経営が破綻してしまうので、これまた景気が冷え込んでデフレに突入してしまいます。

さらに、ローンなどを組んで家を買うのにも、金利の負担が多すぎると家を買ったり土地を買ったりすることを躊躇してしまいますので、これで需要と供給のバランスが崩れ、土地の値段などが下がってしまい、結果として資産デフレ・・・という状態にもなってしまいかねません。
また、日本では、土地などを担保にお金を貸してもらう「ならわし」がありますので、担保としての土地の値段が下がれば、当然貸してもらえるお金も減ってしまうので、これまた、経済が冷え込みデフレに突入してしまう原因にもなりますので、金融の引き締めなどは、なるだけ慎重に行うのが理想であるかと思います。


デフレの無い頃の記憶

私の幼かった頃はデフレなんてありませんでした。
勿論、まだ高度経済成長期だったから?なんて考えることもできますが、原因はそれだけではないようでした。中学生だった頃の社会の先生は、不思議なことに元は証券会社で、本職のトレーダーさんをやっていた方でした。(肝臓を悪くされて、教師へ転職されたそうで・・・)

その為、授業も大変面白く、ぶっ飛んだ授業をしていただいた記憶があります。
その際にその先生が言われていた言葉に、

「みんな、○○○(ある特定の商品です)の値段とか全部一緒でおかしくないか?値下げ競争とか起こってもおかしくないとおもわへんか?」

・・・という、言葉でした。
それに対して私は、「おかしいって・・・なんで?」・・・とまぁ、そんな感想を持った記憶がありました。今からもう20年近く前のお話です。

今から考えると、その当時は、メーカー側の方が力を持っていました。
価格は高値安定をしており、今のように価格にバラつきが少なかったです。

その後、TVでダイエーの特集が組まれました。
とある商品を、メーカーを通さず製造元の工場にじかに製造してもらい、自社ブランドで安く販売するという、今は主流の方法を先駆けて始めていて、大変苦労されている・・・という内容の特集でした。

ダイエーのその自社ブランド戦法はものすごく大ヒット。
安くでメーカー並みとは言いませんが、それに近いくらいの商品が買えるというので、私もキャプテンクックの商品を買うのが楽しみでした。

その頃は安い商品が買えてウハウハ程度にしか考えていなかったですが、後々になって考えてみると、ダイエーは大きな構造改革の布石を敷いたのかもしれないです。偉大な会社です。

しかしながら、価格は競争するものということが広く行き渡ると、それまでは、競争も無く、系列などで安定して賃金などを得ていたのが、ひっくり返ってしまいます。構造が変化するときというのは、大きな痛みを伴うものなのかもしれません。

新しい技術を生み出す地盤を作り、商品の価格が競争される社会でも安定してやっていけるように、社会が変化するには時間がかかるのかもしれません。

明治維新後や、大東亜戦争後など、社会が大きく変革するときには、ものすごい変化が起こるかもしれないですが、何とか乗り越えていけたらスバラシイとは思います。
ただ、この社会がこのまま進んだときに、第2のアメリカになる・・・というだけであるのなら、少々寂しい気はしてしまうのですが・・・。


デフレから脱出するには

デフレに陥ってしまうと、「早いことデフレから脱却したい・・・」
・・・と、誰しもがそう考えるのかもしれないですが、そう生易しくないのがデフレです。

企業はできるだけたくさん商品を売りたいですので、なるだけ価格を安く作ります。闇カルテルを結んで、価格統制でもやって、値段が固定するようにすれば別ですが、そうでなければできるだけたくさん、安くで良い商品を作ろうとすれば、自然に供給が多めになってしまいます。

そこで、考えられるのが、新たな需要の開拓です。
誰もがコレ欲しい!!!と思ってしまうような、とっておきの新商品を作るのです。そうすれば、しばらくはこれで一儲けできるのです。

新しい技術などが開発されれば全て解決するわけではないですが、少しでも雇用が創出されますので、デフレ解決のためには若干でも力になるというわけです。

また、この技術や知識などが他社や諸外国では転用できないものであれば、それだけその会社やその国の雇用は守られ、賃金が入ってくるので、これもまたデフレ対策には有効だと思われます。

さらに、新規の事業を起こそうとお考えの方をバックアップするための資金面での援助や、税制面での控除なども大切かもしれません。
また、規制によって新規に産業を起こせない分野の規制緩和なども新規の事業を起こして、雇用を増やしてデフレを緩和するのには有効かもしれないです。

また、より消費をしてもらうために減税したり、消費をすることを奨励するための税金の控除や、たくさんのお金の集まっている郵貯や簡保などの運用先を考えたり・・・という方法なども、ありかもしれません。
しかし、こういうことをやってもデフレ対策として効果ないし・・・ということで最後に考えられるのが、インフレターゲットかと思いますが、コレはまた後ほど専用のページにて、ご説明したいと思います。

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